ここでは研究室配属に関連するよくある質問をまとめて回答します.また,金澤の研究指導方針も記載します.
更新日:2023.04.24
1. 研究室配属に興味がある人
大学院で金澤研の配属に興味がある人は,金澤に直接アポを取ってください.金澤が直接対応します(Zoom面談 or 対面面談).また金澤だけではなく,ラボの学生にも意見を聞きたいのではないかなと思いますので,それも仲介します.
また,5月に京大理物ではローレンツ祭というイベントがあり,オープンラボをやっています.時期が合えば参加をぜひご検討ください.
また,進学希望者は,博士課程進学(D進)を希望しているかどうかをまず教えてください.というのは,D進するかどうかでテーマ選択の幅が変わります注1.以下,D進希望学生を想定した場合のテーマ選択について話します.
注1:D進しない場合のテーマ制約について
例えば,経済物理学(金融データ解析)で使用するデータですが,当ラボの最高精度のデータはD進予定の学生のみに使用許可を出す予定です.当ラボの最高精度のデータは,金澤が研究用データとして外部から提供を受けているものであり,論文執筆まで漕ぎつけることが強く望まれています.データ構造がかなり複雑であり,「既存理論を学び,データ解析(プログラミング)を学び,更には研究して公表論文を執筆する」という一連のタスクを修士中に完遂することは,就活との両立を念頭に置くと現実的に難しいと思います(過去に経験として難しかったです).D進予定でない場合は,「粒度が低く,データ構造が比較的単純で,公表論文も執筆を特別強く望まれているわけではない別データ」を解析して頂くことになります.
2. 全員共通
金澤は統計物理周辺の確率過程の専門家です.なので金澤研では全員共通することとして,確率過程の実用的な計算方法に詳しくなってもらいます(※厳密数学としての『証明』ではなく,『計算』です.金澤自身が物理出身であり厳密な証明を学生に教えることは出来ませんし,研究上必要としていません).基本的に
の順に読めばよいと思います.
また,全員がある程度は数値計算が出来るようになってもらいます.理論物理は厳密な証明をしない以上,純粋な理論だけではなく,数値計算・データ解析結果などとも組み合わせながら論証の妥当性を検討することが普通です.ある程度は数値計算を通じた理論計算の検証が出来る必要があります.指針を述べます:
- Python,Julia,C++がある程度できるようになる.グラフ作成・可視化などの簡単なプログラミングはPython,高速な数値計算が必要な場合はJulia/C++を使うことになると思います.
- データ解析を行う場合は,上記のプログラミング言語の基本機能だけではなく,パッケージ類やそれに関する基礎理論(統計学・時系列解析・機械学習)に関する知識も必要になると思います.
3. テーマ選択について
テーマ選択ですが,基本的には次あたりが基本的な選択肢になると思います.
- 経済物理学の研究(ミクロデータ解析,確率過程モデリング,理論解析)
- 確率過程自体の研究
- 確率過程周辺の統計物理学の研究
強い希望がないなら,経済物理学での金融ミクロデータ分析を今なら薦めています.論文化を考える際,今は最もテーマ選択などの迷いが少ない収穫期です.また,確率過程の理論解析自体が好きな人も,データ解析と少しでも組み合わせが出来ると論文化に幅が出ますし,トップ誌(PRL以上)を狙いやすくなります注2.
経済物理学と無関係に,確率過程周辺の理論研究をしたい人はそれで結構です注3.金澤は非マルコフ過程基礎論に強い興味があり,その周辺の研究テーマなども選択肢に入ると思います.非マルコフ過程はあまり理論的整備が今までされて来なかったため,今でもやるべき仕事が多く残っています.どのように解決すれば良いかのアイディアはあるので共同研究はウェルカムです.
注2:『論文化』は職業研究者として実際的な問題
研究を始めるまでピンとこないかもしれませんが,研究の「論文化」は短期的に/実際的に最も大きなハードルです.経済物理学のデータ解析は,今であれば出版に向けたテーマ選択に困らないと思いますので,その意味でもお薦めです.また最終的に研究職に就きたい人にとっては,この路線なら情報系・工学系・経済系に近い学際ポストにも応募できるので,おそらく職を得る上での難易度が変わると思います.
但し,これは当研究室での最高精度データを用いてデータ解析をする時の話です.粒度を下げた比較的単純なデータを使うと,プログラミングの難易度は下がりますが,新奇性を出すためのステップが増えます.
注3:理論家もデータ解析は多少できた方が良いと金澤は思う
理論解析自体に興味がある人であっても,常にデータ解析と組み合わせられる選択肢を用意しておいた方が論文化を考えると楽だと思います.というのは,最終的に研究職を目指すのであればトップ誌からの出版歴がある方が良いのですが,トップ誌に載せる場合はデータ解析などを通じて,そのモデル化の重要性を別角度からサポートできると査読上の説得力に大きな差が出ます.論文投稿と査読を経験しないとこの辺の実際的な話にピンとこないかもしれませんが,基本的に物理学者は『我々は現実に興味があり,理論自体は現実ではない』と思っている人が多いです.なので理論を作る際になぜその理論を考えるべきなのか,現実からのサポート(≒自前でのデータ解析か,文献調査)が欲しいと思う査読者が多いです.そういう実際的なことを考えると,両方できることはキャリア上の強みになります.